天国の窓
”魔法の窓”
 優子と貴也は、
近所に暮らす、
同い年の幼馴染です。

優子は小学生の頃、
重い病気を患い、
それから、あまり外出できず、
通院生活が続いていました。

その病状が悪化したのは、
優子の二十歳の
誕生日を迎えた
直後でした。

みるみる内に
優子は衰弱し、
寝たきり生活のまま、
一年が
過ぎようとしていました。

「もっと色んな
 景色が見たいな。」

度々、そう呟く
優子を見ていると、
貴也はいたたまれません。

唯一、外が見える窓も、
視野を殆ど、
隣のビルに占められた、
同じ景色でしかありません。


 この日、貴也は、
優子の病室に、
畳二枚分の
大きなベニヤ板を
持ち込みました。

板の真ん中に、
横長の四角い穴を
くり抜き、
穴の周りを
ステンレスの枠で囲い、
30インチの
テレビの画面が
スッポリとはめられます。

ベニヤ板は、
病室の壁と同じ、
白に塗られ、
ユウコの寝る
ベッドのすぐ脇に、
テレビと共に設置しました。

「これは、
 色んな景色が見える、
 “魔法の窓”なんだ。」

確かに、一目見れば、
その板と画面は、
病室の壁と窓にそっくりです。

貴也は優子に
詳しく説明すると、
病室を後にしました。
< 1 / 18 >

この作品をシェア

pagetop