粉雪-3年後のクリスマス-
the name is “YUKI”
「今夜、飲みに行こう!」

 出社早々、肩にがっしり腕を回してきたのは、年齢も入社日も一緒の同期。

仕事もできるし可愛い恋人もいると、もっぱらの評判だ。


 ──俺と違って、な。


「……なんだよ、いきなり」

「淋しいユキくんを思いやった同僚の優しさに決まってるじゃん!」


 ロッカーを開いたとほぼ同時にやってきた同期のこのオトコ。


 ちなみにコイツは、入社日に判明したことだが、カノジョを紹介してくれた友人の、そのまた友人。


きっとそこから漏れたであろう情報に、俺は深いため息を吐いた。


「んじゃあ、合コンでもやりますか!ちょうど幹事頼まれてたんだよ」

「ちょっと……、お前いるじゃん!」


 俺とは違って、愛しい恋人がさ。

焦る俺に対し、こいつときたらパタパタ手を振ってあしらってくる。


「ああ、いーの。あちらさんの幹事だから」


 要するに、このカップルが幹事ってことか……。

なんだか策略にハマった気がして、ノリきれない。


「詳細はまた連絡するわ」

「ま、待てよ……!」


 行くとは言っていない!

まだ片付けていないコートを片手に、さっさと走り去ってしまった後姿に、もう一度ため息をついてしまっていた。


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