【短編】淫らに冷たく極上に甘く

「ん? 見とれるほどかっこいいって?」

「……そんなわけないでしょ」



クスクス笑う彼から顔を背けて否定しながらも、本当は彼から目を逸らせなかったんだ。


だって、ほんの一瞬。

彼があんな表情を見せたから。

そう。

まるで好きな人に見せるような、そんな微笑み――。


胸が掴まれたみたいに苦しくなって、鼓動が急激に加速していく。


繋がれた手がやけに熱くてどうしようもなくなっていく。



「……何で私に構うの?」



悔しいけど。

強引で自分勝手な彼にドキドキしちゃって、私のこと好きなんじゃないかって錯覚しそうになる。


だけど、彼は昨日キスする前にこう言ったんだ。


“ターゲット”って。


だから、この行動はタチの悪い遊びかと思ったりもしたけど、彼の雰囲気からそうじゃないような気もして。


結局のところ、何が何だかさっぱり。


チラチラと彼の顔を盗み見ながら、彼が何て答えるのかと緊張して鼓動が更に早くなる。



「葵がね……」

「うん」



ゴクリと唾を呑み、彼の顔を見据えた。






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