淡い満月
 
 
片桐さんは無表情で黙ると別人に見える。

黒髪は固めてなくて、風で素直になびいていた。




あなたをこんな風に困らせている私は、

あなたの目にどうやって映っているんだろう。






「……行こうか。」


彼は裾をつかんでいる私の手を取ると、そのままアパートに向って歩き出した。




分からない。

分からないよ。



どうしてそんなに優しくするの?

どうしてそんなに切なく笑うの?
 
 
 
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