Chess
彼女が手をつけたのは、やはり、ポーン。

キングの正面、e7のだ。

それが、斜めに動いて、僕のルークを取る――はずなのに、そいつは、前進した。

e6へ、一歩。

僕のルークの、真横へ。

瞬間、ぞっとした。

勘弁してくれと思った。

さっきあれほど回避したクイーンが今、たった一マスを空けた斜線の先で、僕のルークを狙っている。

それだけじゃない。

僕には見える。

そのクイーンがf6ルークを仕留めた次は、そのまま進撃、f4に取り残されたビショップを食うところを。

f4ビショップの次はそのまま横へ。

h4のポーンが討たれ、そのままがら空きの右翼へ突貫される。

そうなれば、女王陛下の独壇場だ……

僕が……僕がなそうとしていた内側からの破壊――

その構図が、一瞬で見て取れた……!!
< 10 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop