Chess
幸い、f5の白ルークは、そのまま置いといても取られることはない。

ほかの手を考えるには充分だ。

どうする……

ルーク一体に独断先行させるのは戦力不足か。

ここは文字通り、動ける駒を増やそう。

とりあえず、万が一取られたとしても精神ダメージの少ないビショップで行こう。

クイーン脇のビショップを、c1からf4へ。

ちょうど、f5ルークの真後ろにつけた。

僕が打ったあとの彼女は、機敏だった。

指を振りもしない。

初めから決めていたように、e6ルークに手をつけた。

それを、一歩進ませる。

e5へ。

僕のルークと彼女のルークが、横に並んだ。

なんだ、これは……。取ってくれと言わんばかりに……。

――いや、違う。

黒のルークに邪魔をされていた斜線に、彼女のc8ビショップが控えていた。

序盤で鏡写しに僕のルークを狙ったビショップが、いま、また!

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