とんでも腐敵☆パートナー
「な、なななんだよこれぇぇぇっ!」
「手がっ。手がくっついて離れねぇぇっ!」
「助けてくれぇぇっ!」
 
 
 どうやら取っ手に手がくっついてしまったようだ。
 前後左右のドアに、きっちり三人とも手を貼りつかせてる。
 
 一体何が……。
 
 手が……くっつく……。
 
 
 
 …………………………あ。
 
 
 アロンアルファ?
 
 
 ドアに手を掛けた姿勢のまま、パニックに陥る男達。
 その光景を前に唖然としていると、奥の車の陰から、見慣れた頭が飛び出した。
 
 
 俺と目を合わせると、にかっと笑ってピースサイン。
 
 
 やっぱりコイツか。
 
 
 遠くから響いてくるパトカーのサイレン。
 
 がっくりうなだれる男達。
 
 
 
「朽木さ――――ん!」
 
 
 グリコが、駆け寄ってくる。
 
 長いポニーテールを揺らしながら。
 
 顔には満面の笑み。
 
 何も履いてない素足は、躊躇うことなく地面を蹴り進む。
 
 
 まったく――なんて女だ。
 
 もう苦笑するしかない。
 
 だが、込みあげてくるこの不思議な爽快感は、何なのか。
 
 手を振りながらやってくるグリコに、俺は肩をすくめて笑い返す。
 
 足は、自然と一歩を踏み出していた。
 
 
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