とんでも腐敵☆パートナー
 俺も無言でその視線を受け止めた。
 
 
「ふむ……少しは言うようになったな」
 
 しばらくの睨み合いの末。神薙の表情から僅かに浮かんでいた険しさが取れ、いつもの厳めしいだけの表情に戻った。 
 
 だが視線の鋭さはそのままで、
 
「だがまだ青い。自分にとって何が益となるか、よく考えてみることだ。神薙に戻るまでもうしばらく時間をくれてやろう」
 
 続く神薙の言葉は決定を覆す気などないことを強く示していた。
 
 全身の肌が粟立つ。
 
 俺の足元には、未だ氷一枚を隔て、底なし沼が口を開けている。
 
 逃れられない運命なのかもしれない。
 
 だが――――
 
 
 知らず、携帯を握り締めていた。
 

 
 
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