とんでも腐敵☆パートナー
「自分の気持ちとしっかり向き合って! 大事な人は死んでも離さない! 踏んでも蹴られても傍にいるの! 自分のしたいように、とことんやってみて――諦めるのはそれからでも遅くないよ!」
 
 俺は知らず口をつぐんで見入っていたが、そんな余裕はすぐになくなった。怒気をはらんだグリコの顔が、今度は俺に向けられたからだ。
 
「朽木さんも朽木さんだよっ! 本心隠して、『飽きた』なんて言葉でごまかして! 章くんが納得するわけないじゃんっ!」
 
「っ!」
 
 あまりの剣幕に思わず身を引いてしまう。
 
「苦しかったんでしょ!? 傷付いて、それでも朽木さんに依存する章くんを見てられなかったんでしょ!? だから見え見えの嘘で章くんを突き放して――それだけ章くんのことを想ってたんでしょっ!?」
 
「お前に何が分かる!?」
 
「分かるよ! あたしは朽木さんのストーカーだもん! 朽木さんが章くんを想ってることくらい、顔見れば分かるよ!」
 
 こいつはなんでそんなことを言うんだ。
 
 カッと頭に血が昇った。
 
「俺が好きなのは拝島だけだ! 章に期待を持たせるようなことを言うなグリコ! 章の心の支えになってやれるのは俺じゃ――」
 
「好きって気持ちはひとつじゃないでしょ!? なんで分かんないの!」
 
「何を分かれって言うんだ!?」
 
「二人が離れる必要はないってことよ!」
 
「無理だ! 弟としか思えないのに――」
「弟みたいに大切なんでしょっ!? 言葉をすりかえるなっっ!!」
 
「っ!!」
 
 
 瞬間、頭の靄が晴れた。
 
 
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