とんでも腐敵☆パートナー
「本当にすまなかった。アイツが迷惑をかけて」
 
 大した事故にならなかったものの、バンパーが一部破損した。それを拝島は修理費込みで買い取ったのだ。
 
「全然気にしてないよ。むしろ面白かったくらいだよ。朽木のあの慌てた様子……ぷっ。くくっ……悪い。あんな朽木、初めて見たからさ」
 
「確かに、あんなに肝を冷やしたのは久しぶりだった」
 
 俺は憮然として言った。
 
 なにせ見知らぬ女が、あろうことか俺を脅迫し、無理矢理俺と拝島の間に割り込んだうえに拝島の車を塀にぶつけたのだ。
 
 かなりあり得ない出来事だった。
 
 二度と会いたくはないが、あの様子だと近々この大学に乗り込んできそうだ。早急に対策を練らねばなるまい。
 
「ああいう子となら、朽木も付き合っていけるんじゃないかな」
 
 突然、拝島がとんでもないことを言い出して、俺は危うく外灯にぶつかるところだった。
 
「ちょっと俺の趣味じゃないな」
 
 慌てた顔を即座に取り繕って、苦笑を浮かべておく。あまり向きになって否定すると逆に怪しく思われるかもしれないからだ。
 
 心の中ではもちろん「冗談じゃないっ!!」と全力で否定している。
 
「結構いいコンビだと思うけどなぁ」
 
 拝島の笑えない冗談を「あんまりからかうなよ」と軽く受け流しつつ、既に人で溢れかえっている学食に入る。
 自然とその話は打ち切られた。
 
 人の出入りが激しい一方通行路と化した通路を進んで列に並び、定食の盆を持って席を探す。
 
 すると丁度長テーブルの端の四人組が席を立ったので、拝島に目で合図を送ってそこを確保した。

< 30 / 285 >

この作品をシェア

pagetop