君へ

「え、うそぉ」と奴の周りの女子が引くとクラスメイトも口々に「そういえば俺昨日相良がいやそうに佐藤に話しかけられながら図書室出るの見た」と叫ぶ男子等出てくる。
形勢が一気に逆転する。
なおが佐藤に詰め寄られても堂々と切り返した姿や、逆に暴力に訴え理性が無い佐藤への信憑性の無さが浮き上がってきたのだ。
まぁ、周りの雰囲気等関係無いけどね。
「あんまりストーカー激しいと訴えるよ」
最終通告。
早く去れ、と。
「うっ…」
何か叫びながら人を掻き分けて教室から飛び出して行く。
最後まで馬鹿丸だしな姿に更に苛立つ。
あんな阿呆がなおの近くにいたなんて。
「なおの席はどこかな?」
気を取り直して近くにいた女子ににこりと営業スマイルで聞く。
「あ、あそこです」
顔を真っ赤にして窓際の席を指差される。
まだなおは俺の腕の中で静かにしている。
クラスは勝手に騒いで好奇の目を向けるけど無視。
なおの目を塞いだまま席に座らせまだ目を閉じさせる。
「…永久くん?」
もう少しだからね。
小さな不安げな声が可愛い口から漏れる。
お待たせしました。
「目を開けてもいいよ」
ほっと綺麗な瞳を開ける。
安心したのか俺を見て小さく微笑む。
可愛い。
「なおの為にお昼ご飯持ってきたんだよぉ」
なおの机に持ってきたお弁当を広げる。
今朝はあんまり食べれなかったし、なおの事だから一食くらいすぐ切り捨てるだろうしね。
「美味しそう」
保温容器に入れてきたほかほかのリゾット、ほうれん草のソテー、卵焼き等など。
ついなおの為だと作り過ぎてしまう。
「なおの為にあの後作ったんだ、食べて」
なんだか周りが煩いけど無視。
そこの男、なおを見るな。
なおがリゾットに意識を向けた瞬間睨んでやる。
「あったかい」
白い頬に血色が通いピンクになる。
目を細めて美味しそうに食べてくれる。

< 26 / 48 >

この作品をシェア

pagetop