君へ

26

「…ぁっ」
恥じらうようにあげられた小さな声と共に更に甘い入り口が開かれた事を知る。
逃げるようにじりじりと離れようとする体を押さえて、更に侵入する。
驚いたように体を強張らせる。
体を押さえた手にはほとんど力はこめてない。
逃げようと思えば逃げれるようにしてある。
でも、拒絶しない。
だから、俺のこの気持ちが伝わってると、馬鹿な俺は更に興奮してしまった。
逸る気持ちを抑えて、丁寧に歯列や上顎を舐める。
なおは恥ずかしいのかなるべく反応しないようにするのだが、ぴくりぴくりと小刻みに動くのが可愛くて更に煽ってしまう。
「っ…ひ、ゃ」
高い甘い声が可愛い。
駄目だ。
もっともっと欲しくなる。
そろそろブレーキを掛けないと、なおの意識が失くなりそう。
息が上手く吸えないみたいで、そんな所も愛おしい。
名残惜しい唇を最後ぺろりと舐めて離れる。
体を離すと、肩を揺らして、顔を真っ赤にして荒く息をしているなおが見える。
瞬間後悔する。
初めてだったのに、余りに可愛くて暴走してしまった。
「なお、ごめんね」
背中をさすって深呼吸し易くする。
なおの体がびくりと震えたけど、長い髪で伏せられた顔が見えない。
「なお?」
心配になって顔を覗き込む。
それを拒むようにぶんぶんと首が左右に振られる。
「………は、恥ずかしくて」
しばらくしてやっと、一言喋ってくれた。
安心する。
「そっか。ごめんね」
そろそろいいかな?
なおの顔を覗き込む。
「なお、ヤだった?」
俺、下手だったかな?
心配。
かあああぁぁぁ。
一気になおの顔に血液が集中する音が聞こえてきそうだ。
なおは素直だなぁ。
「ヤ、ヤ、ヤ…、か…分か、な…」
ヤだとか分からなかった?
じゃあ。
ああ、なおは大好きで優しくしたいんだけど。
これは本心なんだけど。
なおの少し困った潤んだ瞳で見詰めてくる感じも好きという感情があるのも、本心なんだよね。
少しだけだけどね。
「また、しても良い?」

俺はこの時なおがこの手に全て入って、幸せで、なおもそう感じていると、そう、思っていたんだ。
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