零の狼-新撰組零番隊-
この炎は知っている。

私の瞳にも、時折宿る事のある炎。

復讐の炎。

「祝、あんたも仇討ちが目的だったんだな。胸中察する…が、七種雲母は駄目だ。奴は俺に譲ってもらう」

彼の握り締める人斬り包丁が、ミシミシと音を立てた。

「あんたは俺の事を、何て聞いてるかは知らないが…ヤクザ者五十人を斬ったっていう話…あれは尾鰭背鰭がついた出鱈目だ…五十人を斬殺したのは俺じゃない…五十人のヤクザ者と対峙していた俺の前に、突然現れた七種雲母…奴が、五十人を瞬く間に斬ったんだ…大した目的があった訳じゃない…『ただ人斬りがしたかった』…それだけの理由でな…」

一七夜月さんの歯噛みの音が、ここまで聞こえてきた。

怒りに自らの奥歯を噛み砕きそうなほどの、歯噛み。

「惨劇に動けずにいた俺を嘲笑い、奴は消えていった…俺にドデカイ屈辱を背負わせてな」

…そうか。

私の目的が仇討ちならば、彼の目的は復讐。

威震志士の七種雲母は、私達にとって、共に狙うべき仇なのだ。

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