甘いクスリ

 

『ギタリストは、
ロマンチストなんです。』

脈絡もなく零れた台詞は


『そうよ。そんな所が、
たまらなく嫌だったもの。』

意外にも、拾われていた。

『あの頃、晴紀は、夢と現実が
うまくリンクしてなかったわ。

実力に見合った生き方が
出来てなかったというか・・』

彼女の言いたい事が
汲めずにいた。

『ああ、そんな経験、
ないんだね。

その方がいいよ。幸せだよ。

ーーーー元々、私たちは
一緒になんて、
なれなかったのよーーー。』

彼女が溜息と共に
吐き出した結論が
悲しかった。


『どんなに思いあっていても、
一緒になれない人っているわ。

私と晴紀は、そういう
相手だったのよ・・・』

経験あるでしょ?って、
マリさんは言う。

例えば、デートの約束も
うまく叶わなかったり。
食事すら、予定が、毎回
合わないだとか・・・
明かに縁のない相手。


・・・ゞ
残念ながら、マリさんほど
モテる訳のない私ではありつつ

経験はないけど、何だか
わかる気がした。


 
< 131 / 212 >

この作品をシェア

pagetop