甘いクスリ
 

そんな、ある日のこと。

 
「あ。堂野先生、発見」

「おー。真月。
何?練習に来たの?」

空き教室からひょっこり
顔をだした真月に驚く。

個人練習なんざ、
鷹尾のスタジオで出来んだろ?

さぞかし、不思議そうな顔を
したのだろうか?

「樹里がライブのリハで
引きこもってんの。
空室があるって、受付嬢が
連絡くれたから、それで。」

って、真月は、ここにいる
理由を話して聞かせる。


相変わらず、練習好きな
夫婦だ・・・

「先生、何か
穏やかな表情してんね。
うまくいってるんだ?」

鋭い真月の事だ。
隠したって、
丸わかりなんだろう。

鈍い奴でも、こんな事は
十分わかるかもしれない。

あの後、ちょっと
落ち着きを取り戻した俺は
何とか通常の俺らしい
仕事っぷりを発揮していたから。


「真月、一杯だけ、
飲みに行かない?」

気になるのは、女の子としては
やっぱ、あんな馴れ初め
許せないよなぁ・・・

それについて
意見を伺いたかった訳だが。
 
「お〜のぞむところ。」

真月なら、俺をからかったり
しないだろうと、アタリをつけ
誘ったのだった。 

 
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