甘いクスリ

 
「さて、いこうか。」


七海ちゃん達の演奏が終り
堂野さんが、私たちに、
ステージにあがる様促す。

私と自分の楽器を手にした
先生が先にセッティングに
向かう。

ボーカルさん達ほどでは
ないとはいえ
白のレースをあしらった
マキシ丈の巻きスカートを
言い付けどおりワンピに
重ねた私は、歩きにくくって
しかたがない。
完全に裾をひきずっている。


「都築さん。」

裾を持ち上げて歩きだした私を
真月さんが、呼び止めた。

「はい?」

振り返る私の頭髪に
不意に白いオーガンジーが
かぶせられる。


何っ?!


思わずギュッと目をとじる。


「私からのご褒美よ。
『勇気』だしたみたいだから。」

「・・・?

彼女は片手で器用に
髪にそれを飾ってくれる。

「ほら、先に、歩いて。」

相当な長さのソレを持ちあげ
促す真月さんの声に、
私は、再び歩き始めた。


 
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