甘いクスリ
 

「まっ待て
今日は、マジ、マズイって
頼むっ帰ってくれ」

堂野さんの声と、複数の足音

「んなもん、通る訳
ねぇっしょ〜?!
俺は、何度、アンタの餌食に
なったと思ってんすか。」

「いや、それと、これはっ」

そして、縺れ込む様に
足音と声が、開いた扉から
飛び込んできた。


「ども、お邪魔しま・・・」


見るからに愛想笑いを浮かべた
目の前の男の人が、瞳を見開き
言葉を失った。


『固まる』とは、

まさに、こういう状況なんだ。


「・・・・」

当然、私だって、声が出ない。


「・・・都築さん、こんな所で

・・・何してんの・・・?」


呆然とした表情の、
その人の横でーーーーー


堂野さんは、お手上げだと
言わんばかりに
目頭とコメカミを
指で押さえていた。


「だから、帰れっていったのに
人の言うこと気かねぇから。
鷹尾君はぁ・・・・」

そう。

乱入者は、鷹尾先生。


「えっ、何で?何で都築さんが
ここに居るの・・・?」

状況の飲み込めないその人は。

「だから、さっき言ったじゃん
カノジョが来てるから、
今日は帰れって」

 

 
< 196 / 212 >

この作品をシェア

pagetop