甘いクスリ
 

「へぇ・・・なんか、ちょっと
意外だったかも。」

鷹尾先生が、私を見て
微笑む。

「都築さんが、堂野さんの
彼女とは・・・

案外、いい組み合わせ
かもね。

都築さん、こんな
オッサンだけど、
見捨てないでやってね。

ウデも、ちゃんとある人だから。」

そういってニッコリ笑う。


こんな屈託ない笑顔の
見せられる人だったなんて
驚きだ。

小さく息をとめた。


レッスンの時に見てた笑顔は
社会的な表情に
過ぎなかったんだね。

私が、憧れていた先生は
『先生』という公的な人物像の
ほんの一部に過ぎなかった。

誰彼なく、
自分をさらけ出したり
する人なんていないから、
当然かもしれないけど・・・

私は、全てを見ていたんじゃ、
なかったんだね。


鷹尾先生は、結婚して
丸くなったし、優しくなったと
わかってたけど・・・
(勿論、ずっと優しかったよ。
対、生徒なんだから。)


間違いなく、これは、
真月さんがいるからだ。



 
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