甘いクスリ
都築の部屋から
駅までの道のりを
引き返す。


10分程歩けば
彼女のすむ部屋なんて
すぐにたどり着く。


エントランスで505号室のインターホンを鳴らす。


そんな遅い時間じゃないけど
当に、社会的関係者の
お宅訪問をすべき時間は
過ぎきっている。


二回ほど、
チャイムを鳴らすけど、
さすがに彼女は出てこなくて。

だけど、こんな時間に
出かけたとも思えない。


諦めて帰りかけた時
たまたま帰宅してきた
サラリーマンに引っ付いて
中に侵入した。


ヤベェ・・・

ちょっと
ストーカーくせぇよな。
俺。

・・・一歩間違えりゃ
犯罪じゃねぇか。



そうとは思いつつも
いまさら引き返せずに
都築の部屋の扉をノックした。



「・・はい?」

しばらくして扉越しに
彼女の声が聞こえる。


「ああっと、俺」

・・・

お前は彼氏か?
心の中で、
自分に突っ込む。


「はい?」

「あ〜、いや、あのぉ・・
堂野です。」

ちょっと照れつつ、
そう告げれば、えっ?!って、
いいながら開錠する音が
聞こえる。

ゆっくり、細く、扉が開き
チェーンで繋がれた隙間から
彼女が俺を確認した。


「先生?」

言葉をなくし固まる都築に
苦笑する。

「開けて?」
「あっ、はい。」

慌てて彼女は
チェーンをはずしてくれた。

 



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