†神様の恋人†

奇跡

2月も半ばに差し掛かったある日のこと。

わたしたちがいつものように礼拝堂でお祈りをしていると、一人の少女がわたしたちのもとへ駆け寄ってきた。

「ジャンヌ~!!ミシェル~!」

「…アリア!!」

大きな瞳を輝かせて走ってくるその少女は、この礼拝堂に通うようになってから懐かれてしまった10歳の少女だった。

「アリア、今日は遅かったじゃない。ま~たお母さんに叱られてたんじゃないの?」

ジャンヌがアリアの顔を覗きこむように背を丸めて言う。

するとアリアは頬を膨らませて抗議した。

「違うもん。今日はお手伝いをいっぱいしたから遅くなったんだよ、ジャンヌ」

ジャンヌが「そうか、ごめん」と笑う。

アリアも小さいながら信仰心が篤く、毎日のようにこの礼拝堂を訪れていた。

明るくて勝気なアリアの笑顔を見ていると、戦争をしているなんて嘘なんじゃないかと思えてくる。

わたしとジャンヌがとても和む瞬間だ。

「じゃあ、アリア。一緒にお祈りしようか」

「うん!」

3人で並んで長椅子に座る。

アリアは小さな手を一生懸命にぎゅっと組んで祈り始めた。

しばらく目を瞑って祈っていると、ガタンという何かが倒れる音が静寂を破った。

「…アリア!!」

目を開けると同時にジャンヌの悲鳴が聞こえる。

アリアは、椅子から転げ落ち、床に倒れていた。

「アリア、どうしたの!?」

抱き起したアリアの顔は紅潮し、息も荒く、ひどい熱だった。

「…ジャンヌ…熱がひどい。お医者様を…!」

「…黒死病かもしれない」

…………え………?

ジャンヌは、アリアの腕に現れている黒い斑点を見て、苦しげに頬を歪めた。



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