†神様の恋人†

忍び寄る悪魔と光

「ミシェル!」

明るく呼ぶ声に、わたしは衣服を縫う手を休めて振り返った。

18歳になって体格もしっかりとしてきた三男のジャンが、昼食を終えたばかりの満足した表情で優しく笑っていた。

「ミシェル、そろそろ暖かくなって河原にミシェルの好きな花がたくさん咲いてるころだよ。見に行ってみない?」

あれから、わたしが教会で拾われてから3年。

ダルク家の優しい愛情で、わたしは無事に11歳の誕生日を迎えることができた。

本当に自分が11歳なのかって言われると、それはわからないっていうのが正直なところ。

誕生日もわからないわたしに、ジャンヌが誕生日をくれた。

ジャンヌがわたしを教会で見つけてくれた日。

4月13日。

今ではわたしが最も神に感謝を捧げる日、だ。

「ね、ミシェル。行こうよ!」

今日中に服を仕上げてしまいたかったわたしは、ジャンの誘いに少し迷いならが隣で同じく縫物をしているジャンヌに視線を移した。

ジャンヌは13歳になってますます女性らしく、そして村の外のことなんて知らないけれど、村の中では間違いなく一番の敬虔なクリスチャンになっていた。

その少女らしい風貌にはおよそ似つかわしくない鉄壁のような信仰心。


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