†神様の恋人†

疎開

「…ヴォークルールが攻撃されてるぞ!!」

その知らせは、のどかにいつもの夏を過ごしていた少女たちの耳にも入ってきた。

「アンヌ!この村もいつ襲われるかわからないわ!早く支度しなさい」

一緒に川辺で遊んでいたアンヌのもとに彼女の母親が駆け寄り、叱咤した。

「ジャンヌ、ミシェルも、速く家に帰って村を出る準備をなさい」

不安げに母に手を引かれながらこちらを振り返るアンヌ。

ジャンヌはそれを見ながら唇をキリと結び、わたしの手を握った。

「行こう、ミシェル」




3年前のあの夏から。

ジャンヌがフランクを振ったあの夏から。

ジャンヌは、たまに思いつめたような表情になることがあった。

それはフランクへの罪悪感からなのか、とわたしも家族もそう解釈して納得することもあった。

ジャンヌの優しさは全く変わらないけど、彼女は何かを恐れているようでもあり、何かを決意しているかのようでもあった。

ジャンヌはただ、毎日、神に祈る。

わたしには、ジャンヌと神にしか通じない“言葉”があるかのように、思えた。


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