†神様の恋人†

オルレアン包囲




―――――わたしは、あの時の光景を絶対に忘れない。





「…ジャ…ンヌ……んね…ごめん…ね…」

「…カト…リ…ヌ……」

赤く染まったカトリーヌの手をきつく握り締めるジャンヌの細い指。

ゆっくりと生を惜しむように閉じられたカトリーヌの瞳。

傍らに、絶命して倒れている兵士の手に握られている血に濡れた剣。

その血に濡れた剣を両手で取り上げ、




――――――高々と天に向かって突き上げた、ジャンヌ………!!





「……ぁぁあああああ―――――――――――――………………!!!」




それは、神への断罪か。




この時のジャンヌに、神の声が聞こえていたかどうかは、わからない。



でもこの時。


姉が無情にも処女を奪われ、命尽き果てた様は、


神の“純潔の乙女”であることを護ってきたジャンヌの脳裏に、



―――――――鉄の十字架として深く刻み込まれた。









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