†神様の恋人†

決意

「わたしたち、やっと…戻って来たんだね」

3ケ月ぶりのドンレミ村だった。

村は、ブルゴーニュ軍や、野盗に襲われてひどい有り様だった。

荒れ果てた畑に、壊された家々。

イザベル母さんもジャック父さんも、ジャンたち兄弟も、胸を痛め、そして祈りを捧げた。

ジャンヌは、ただ、天を仰いでいた。

この頃のジャンヌが何を想っているのか、もう誰にもわからなくなっていた。

疎開先で、ジャンヌに求婚した男性がいたけど、やはりきっぱり断ったジャンヌを両親は心配げに見つめていた。




そして、月日は過ぎ、

時は、1429年1月になっていた。

それは、ジャンヌが17歳の誕生日を迎えて間もなくのことだった。

「ヴォークルールに行く。王太子様に会うまでは、帰らない」

「…ジャンヌ…!?」

ジャンヌは両親に反対されるのがわかっていたからか、彼らには言わず、わたしにだけ語り始めた。

「ヴォークルールの城下に下宿させてもらえそうな所があるんだ。そこに1ケ月でも2ケ月でも下宿して守備隊長に毎日でもお願いする。必ず王太子様への謁見を許していただけるように」

「…ジャンヌ!!」

「…ミシェルは、わかってくれるよね?わたしにとって、“神の声”は絶対なんだってことが…最近、頻繁に神の声を聞くんだ。『ジャンヌ、フランスを救え』と…」

ジャンヌはその手に見えない剣を握り締めているかのように、固く握った手を見つめていた。




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