†神様の恋人†
1階の暖炉のある部屋で少し遅い朝食を囲んだのは、ジャンヌと母イザベルと姉のカトリーヌ、それにミシェルの4名だった。

父ジャックは羊に食事の牧草を与えるために朝早くに出かけ、兄たちも手伝いやそれぞれの仕事に出かけたとのことだった。

食事のパンとチーズ、ミルクを目の前に並べられたミシェルは、目が覚めた時から感じていた違和感と恐怖の原因をやっとその口から吐き出した。

「……わたし、ミシェル、と言うんですか?わたし……誰なんでしょうか?さっきからずっと考えても…わからないの」

語尾が少し震えそうになって、必死でこらえた。

食事をする手を止め、全員一斉に自分を見る目が、少し怖いと感じる。

ミシェルの記憶は、今朝の羊の声と、教会の鐘の音から始まっていた。

昨日以前の記憶が、全くない。

どうしていいかわからず、ミシェルは唇を震わせた。

「ミシェル。あなたは8歳で、教会に倒れていたのですよ。ジャンヌがあなたを一番先に見つけたのは、きっと神の御加護でしょう。ジャンヌは、一目であなたを気に入ってしまったの。ねぇ、ジャンヌ?」

イザベルがからかうようにジャンヌに視線を投げかけると、ジャンヌは少し照れたように頬を赤らめた。

「ジャンヌはずっと神様に妹が欲しいってお願いしていたのよね?こんなにいい姉がいるのに、ジャンヌったら冷たいんだから」

カトリーヌもからかうようにジャンヌの頭をこづくと、ジャンヌはますます頬を赤らめ、「だって、お姉さんになりたかったんだもん…」と、頬を膨らませた。

瞬間、3人に笑顔が広がり、ミシェルは温かい笑い声に包まれた。




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