無口な王子様
教室の中からは亜弥が何か言い返している様だったけど、亜由美に耳を塞がれて何を言ってるか分からなかった。


「よく頑張った!」

亜由美はそう言って私の肩を抱いて、人気の少ない場所まで連れて行ってくれた。

「……言い返せなかったよ。私。」

亜由美と並んで静かな階段に座ると、急に手が震えた。

「バカだね。凛が言ったんでしょ?こんな時は泣かなくちゃ。」

私は、亜由美に抱き締められてとうとう泣いた。

亜弥と恭子を亜由美と比べた罪悪感と、裏切られたような気持ち、そして悔しさと、亜由美に対する感謝。

全ての感情が入り交じって、涙が止まらなかった。
< 78 / 205 >

この作品をシェア

pagetop