Libra ~揺れる乙女心~

付き合うということがどういうことなのか、まだわかっていなかった。

ただ、メールをして、時々話して、たまにデートをする。



それが男女交際だと思っていた。



―俺と理沙は何か違う。



それを教えてくれたのがあの2人。






少し肌寒い季節。


文化祭の準備で部活に行けない日々が続く。

俺と健太は、お化け屋敷の大道具係になり、毎日真っ暗になるまで作業をしていた。



違うクラスの理沙は、俺が部活に行っているのか、文化祭の準備をしているのか・・・きっと知らない。

どうでもいいのかも知れない。




一緒にいない時の『俺』は、彼女にとって、どういう存在なんだろう。



俺は、一緒にいない時間も彼女を想う時間がある。

それは、好きだったら当たり前だと思う。




「鈴子、早く来ないかなぁ?」


大きなベニヤ板に赤い毛糸をボンドで貼り付ける作業をしている時、健太が言った。



「今日、一緒に帰るんだ。鈴子の家でご飯食べるんだ。」


健太は、赤い毛糸の束を握り締めながら、俺に笑いかけた。


いつから・・・そんなに深い仲になったんだ。


男同士は、なかなか彼女の話をしない。




健太と鈴子って・・・


もう、大人の関係??



幼い顔で俺に微笑みかける健太の頭を叩く。



「ニヤついてんじゃねぇよ!」



羨ましい。


俺と理沙とは、何かが違う。



素直で


堂々としていて、


微笑ましい。




本音をぶつけることのできない俺とは大違い。


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