約束
 だが、日本語で書いてあるので読めないことはない。とりあえずやってみて理解できなかったらこのことをナシにしてしまえばいいのだ。


本を抱え、カウンターまで行く。カードにクラスや氏名などを記入し、簡単に貸し出しを済ませた。このまま教室まで戻り、中身をもう一度確認しようと思ったときだった。

 出て行こうと扉を見た私の姿が固まる。そこには木原君が立っていたのだ。彼は私を見て、微笑むと、その視線を私の抱えている本に向けた。


見つかってしまった。悪いことをしているわけでもないのに、嫌な汗が背中を伝う。

「本を読むんだね」


 意外そうな顔をされ、とりあえずうなずいていく。だが、あまりこれ以上追求されたくなかったので、急ぐと言い残しその場を足早に去ることにした。

立ち去ろうとしたとき、木原君の背後に人影を見つける。どちららが先に見たのかは分からないが、その人と目が合っていた。
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