エンターテイナーズ



驚いたのは、岬さんの手回し力だ。


私が社長室に訪れるまでに私の家に連絡を入れたという。


「君がうちの事務所に入ってくれることは分かっていたからね」


と、分かるような分からないようなことを言っていたけど。


おかげで家族への説明が省けたのは良かったけど。


そのかわりにお父さんからは「芸能人の男は信用するな」とかなんとか言われ、
お母さんには「イケメンな彼氏いっぱい作りなさい!」と矛盾したことを言われた。




事務所では簡単な書類にサインを済ませたあと、
9階の撮影スタジオで写真を撮られた。


大学に推薦で合格していることを岬さんに伝えると、


「そこだったら私の母校で融通利かせてもらえるから大丈夫。
主に通信教育って形を取ることになると思うけど」


――案外あっさりと入学を許可してもらった。


「今の時代、芸能人だって学歴がある方がいいからね。
大学に行くことは大賛成だよ」


ニコッと笑って言った岬さんに、

もしかしたらこの人は始めからそうするつもりだったのかもしれない

と思ったのは内緒。


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