後向きの向日葵
意外な連鎖
「工藤にも言われたよ。マルチだろって。」
私が、具体的に事情を説明した時、一人、車好きの名前が上がった。
古臭い雰囲気を醸し出してはいないものの、工藤君にはどことなく、職人気質の頑固親父を思わせるところがあった。
先輩の側において私や彼の意見は、完全に拒絶されはしなかったのだ。
ただ、色々な思いが交錯するところでもあり、当の先輩は、一度にギブアップ出来ずにいたのだった。
その一方で、私の内面においてもその頃に至ってようやく、“強く、軽率に抑止を促すことはかえって、逆効果を生む可能性がある”という、認識を扱う意識がけも芽生えていた。
そのうちにモリ先輩の方が、そうした私に、意外なことを語り始めたのだ。

「ソラさんと一緒に遊んだ時、偶然、井口さんという、私の同級生に会ったでしょ?」
「ああ!チョウチョと呼ばれていた?」
「そう。チョウチョ!」
「チョウチョさんがどうかしたの?」
「うん・・・。私ね、チョウチョから10万円もする、下着を買っちゃったんだよ。」
「それって先輩にとって、必要なものだったの?」
私は、話題の要点を聞き返した。
「・・・・。」
「???」
「おかしいなと思って、この前、何とか、返品したところなんだ!」

声を絞り出した先輩を前にして、私は驚きと戸惑いを隠せなかった。
私が偶然と呼ばれる日に目にした、井口さんと先輩の間に交わされた会話は、ドライに心地好く、楽しそうな感じの景色だったからだ。
この明るい絵の下から出てきた、思わぬ契約関係に私は、目を丸くするしかなかったのだ。
10万を安いと思う世界もあるが、私の近隣では間違いなく大金だった。
そして、先輩はそれをポンと出したと言う。
これは一体、何なのだろう。
もしかしたら・・・。
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