後向きの向日葵
嫉妬
「なー、お前?同期の女の子の中で、誰が一番かわいいと思う?」
「えーそりゃあ、断然、湯村さんでしょ~~。」
「俺も、湯村瑞江~!」
女子の品評会にはしゃいでいる男性らは、広告会社スカイバードの新入社員たちだ。
彼らは、私の同期でもあった。
私には知らぬところであった、この話を知らせてくれたのは、同じく、女子同期の西崎彩子だった。
「そんな話をしているのか・・。」
私がなるほどと思っていると、西崎は、ぷうっと頬を膨らませた。
「もう!何ソレって感じだよね!」
西崎はその中にニの一文字も、登場しないことに不満気だ。
私からすれば西崎は、綺麗なほうだと思う。
当該の人物湯村ことユムランと比べるならば、ナチュラルにかわいい彼女に対して、西崎はコスメティックビューティといったところだろうか?
西崎だって、顔立ちは悪くない。それを更に引き立てる、お洒落の上手な子でもあった。
それに、女子同期の中の出世頭だ。

ただ、営業・実践系の出世頭ではない、いわゆる秘書コースを辿る者であって、彼女は言わば、綺麗どころの役割を担う必要があったのだ。
ところが、我が社の男性と来たらそんな彼女よりも、地味な群に入る、ユムランの側を持ち上げていたのだ。
学生時代、地方では、姫と言われた西崎にすれば、俄然、面白い話ではなかったのだ。
他方、ユムランをかわいがる男性は非常に多かった。
それはいずれ、レクリエーション等で明確な差別問題を、引き起こすに至る程の凄味だった。
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