白の世界
一輝はベットに、あたしは入り口の横にある、スプリングがこわれたソファに腰をかけ、発泡酒をあけて一口飲んだ。


「想像したとおりの部屋だったよ。あ、でも、ちゃんと掃除してるんだね。片づいてる。」

「まあね。部屋散らかってると、なんだか落ち着かないから。休みの日には一応掃除してるんだ、こうみえて。」

「なんだか、意外!バンドやってる人の部屋って散らかってそうだもん。すごい!えらい!」

一輝は照れながら微笑んだ。


それから、しばらく一輝がお気に入りのレコードを聞いたり、FISH WIFEのデモを聞いたりして、あっというまに時間は過ぎていく。



アルコールを口にしながら、たばこをふかして、好きな人と、好きな音楽を聞く。

今まで、ありそうでなかった、ときめきがそこにはあって・・・。

不思議な事に、何もかもがキラキラして見える。

たばこの煙でくすんだ壁とか、汚れたギターアンプとか。

たばこの吸い殻でいっぱいになった、灰皿さえも。

そんなものまで、いとおしくキラキラしている。

そして、一輝の横顔も・・。

たまらなく、愛しいかった。



もう夜中の2時を回って、お互い少し疲れてきたので、シャワーをあびて、寝る支度をして、といっても、あたしは着替えもなにも持っているわけないので、一輝のスエットを借りて、二人でベットに潜り込んで。


そっとキスをして。

手をつないで、眠った。

暖かく、久しぶりに、暖かさにつつまれて、眠った。



もう、朝なんてこなくて良いのに!って想いながら眠った。








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