白の世界
Cherry Coke Highの曲は、FISH WIFEのものに比べると、攻撃的ではなかったし、退廃的でもなかった。

曲は可奈が作って、詞の才能が全くない可奈に変わって、詞はあたしとミホでつけている。詞といっても、つらつらと不満を述べているだけの、ひどいものだけど。


早い!(曲は1分以内で終わる)

オリエンタル!(民族風の雰囲気を取り入れたい!)

エロい!(ジャパコアに少ない、女子、という特権を最大に生かそう)

を、もっとうにしている。


あたしたちには、今流行っているような、ありきたりな、せつない曲なんて作れるわけないのだ。


「明日のライブには、新曲を入れてやろうよ。さすがに毎回、同じ曲ばかりだと、客も飽きるし、自分たちも飽きる。」

可奈が、ドラムのスティックで床をコツコツ叩きながら言う。

「そうだね、だいぶまとまってきたし、そろそろお披露目してもいいか。」

「半年、近く同じ曲だけでライブやってるんだよ、あたしたち。」

あたしもミホもしゃがみこんで、苦笑してしまった。


「明日はさ、FISH WIFEのみんなも見に来るって言ってたし。酔っぱらってるところしか、きっと印象ないと思うからさ、気合いいれてやります。」

「ああ、きっと無理だね。可奈は明日も、いきなりベロベロだと思うよ。」

「そ。で、ドラムもヨレヨレだよね。」

「・・・、あたしってどうして、そんなキャラなの?」

「どうしてと言われても。」

「自分の胸に、いや、行動に聞いてください。」

「あふ。」

スネアの上に、うなだれる可奈の頭をこづきながら、退室の時間になったので、あたしたちはいそいそと片づけを始めた。

こうやって、ほとんど話してばかりで、スタジオは終わるのだ。





< 7 / 47 >

この作品をシェア

pagetop