ノラネーコだんしゃく
ちょっとそこの君
君はこの町の子かい?それなら、ノラネーコだんしゃくの話を、聞いたことがあるだろう?

そう、あの悪名高いノラネーコだんしゃくのことさ。

ノラネーコだんしゃくの名前は、正しくは、ノラネーコ・ハラヘッタ・ケボサボーサ5世というのだ。お父さんものらネコ、おじいさんものらネコ、ひいおじいさんもひいひいおじいさんものらネコという、たいへんにゆいしょ正しいのらネコなのだ。

だんしゃくはのらネコのくせに、でっぷりと太ってる。太ってるくせに、身のこなしは軽々だ。軽々なくせに、毛は長くてぼっさぼさ。ぼっさぼさなくせに、毛の色はひよこみたいなうす黄色。ひよこみたいな色なのに、いつも汚れてゴミみたいな色になってる。ゴミみたいなのに、なぜかライオンみたいに堂々としてる。堂々としてるくせに、のらネコなのだ。それが、だんしゃくが「だんしゃく」と呼ばれるゆえんなのさ。

ノラネーコだんしゃくの見分け方は三つある。一つはひげ。「ネコなんだから、ひげがあって当たり前じゃないか」と思うだろ?そうじゃない。ノラネーコだんしゃくには、なんと、鼻と口の間にちょびひげのように見える黒い毛が生えてるんだ。

ふたつ目はしっぽ。長い毛がふさふさ生えてる、太くて立派なしっぽなんだが、先っぽがステッキみたいにくるんと曲がってる。そう、立派な紳士が持ってるようなステッキみたいにね。

みっつ目は鳴き声。ノラネーコだんしゃくは、町中の高いところに上るのが好きなんだ。で、そこから、下々の人間たちを見下ろして、これから戦に出ていく男のようにおたけびをあげる―

「ニャフーン!ニャフフフーン!」

それが、これから悪さをしに、下へ降りていく合図なんだ。

それが、だんしゃくが「だんしゃく」と呼ばれるゆえんなんだな。

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