【短編】 ききたいこと

 *

 見るとそれは紛れもなく先生からのもので。
 とっさに携帯を掴んで開いてみた―――けれど、そこから下へスクロールバーを下げることが出来ない。

 もし、怒っている文章だったら。
 もし、どうして知っているのかとしか書かれていなかったら。

 そう考えると嬉しさより怖さのほうが先に立って、なかなか思うように親指に力が入らなかった。


(―――でも)
 
 でも、せっかく一歩を踏み出したのだ。
 こんなところで諦めたら、もったいない!

 私は意を決してスクロールバーを動かした。


[こんばんは。驚いたよ。どうして佐々倉が俺の番号を知ってるんだ?]


 予想通りの文面に一瞬固まる。
 けれど、まだまだ先があるらしく、内容はこれだけではないようだ。
 ほっとするやらびくびくするやら、震えが止まらない指先を叱咤して私は先へ進んだ。


[まあいいか。
だけど誰彼なしに教えるのはよしてくれよ]


 噴き出した。
 いいんだ。
 私としては助かったことに変わりないけれど先生、すこしは用心を考えたほうがいいかもしれない。


[章題2は、昨日の授業で教えた公式を使って解くんだ。メールで説明するとこんがらがりそうだったからノートに書いた写メを送るな。見づらかったら言ってくれ。

藤堂]

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