【短編】 ききたいこと

「それは、なんだ? わかってるんだろう?」
「……わかって、ます。休んでばかり、だからですよね」
「長里先生、今日の会議の資料なんですけど―――あっ、佐々倉」

 先生に名を呼ばれ、びくんと肩が上がった。
 気づかれた―――。
 しかし私は顔を向けることなく、俯いたまま頭を浅く下げた。

「すみません藤堂先生。資料ですね、ありがとうございます。 そうだ佐々倉、おまえ、二ヶ月以上前からずっと塾を休みっぱなしだそうだな。めずらしく行ったと思っても1時間と経たずに塾を出てしまうと聞いたぞ」

 先生から資料だという紙を受け取りながら長里は言った。
 私はうなだれた。

「それ、母が言ったんですか」
「そうだ。塾からもいいかげんに出てきてくれないかと催促の電話がくるそうだ。だが、どう言っても佐々倉は自分の話を聞いてくれないから先生に相談してきた、ということだ」

 肩が重くなる。
 どうして学校外のことを学校の者に相談するのだろう。やめてくれ。頭が痛い。

「ちなみに聞くが、佐々倉はどのくらいの頻度で塾に通っているんだ? 週一、二か?」

 時間を取らせるなと言っておいてちなみにもくそもないだろう。
 長里の質問に私は鼻で嗤いそうになった。


「週五、五時から八時までの三時間です」

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