【短編】 ききたいこと

 *

 第一に、この鬱陶しいやり取りがいいかげん疲れたから。
 第二に―――こちらが諦めた"ほんとう"の理由―――

「先生は、生徒の私より生徒の親の意見を尊重するんですね」

 すると今度こそ現代文の先生は喉になにかを深く詰まらせたらしく、口もとを手で押さえながら水道のほうへわたわたと走っていった。

「佐々倉、それは違ってだな―――」
「今日から塾に戻ると母にでも父にでも電話してください。気の済むまで、お好きなだけどうぞ。失礼します」

 おちつけと促す長里を問答無用で断ち切って、早口でまくし立てると、長里の返事を聞くことなく、私は職員室をあとにした。



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