氷の女王に口付けを

「しらばっくれるな! 私から逃げようたってそうはいかんざき!」


約束はきちんと守ってもらいますよ。


トドメの一撃をお見舞したら、タクちゃんは肩を竦めて小さく溜息をついた。


「でもお前、もらった所でつけないだろ?」


「付ける付ける。普段は付けてないけど、試合とかで付けるから大丈夫だぞっ」


Vサインを送りつけて、三度手のひらを突き付ける。


タクちゃんのことだから、きちんと用意しているはずだ。


というか、絶対に用意してる。


だって昨日、羽生さんから「クレ坊に色々と相談されたんだけど、そろそろ貰ったかな?」って意味深なメールが届いたばかりだもん。


頭の後ろを掻いて視線を泳がせるタクちゃんは、少しずつだけどバックしている。


だから逃がしてたまるか。


ぎゅっと両手を握ってタクちゃんの逃走を阻止すると、効果があったのか進行が止まった。
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