危険ナ香リ

大切ナ時間





 どっ、どうしよう。




 いつもは曲がってる背中をピンと伸ばして、足もピッタリと閉じて。


 ドッキンドッキン波打つ心臓を落ち着ける術も分からずに、ただ座っていた。


 こんなあたしを見て、お姉ちゃんはため息をはいた。




「どんだけ緊張してんのよ……」




 だ、だって!!


 デートなんて初めてだし、しかも相手が佐久間先生だし、しかも2人っきりだし!


 ……それにっ。




「も、もう一回鏡見てくるっ」

「……5回目よ」

「だって、化粧なんて初めてなんだもん!」




 まあ、したのはあたしじゃないけれど。


 あたしに化粧をした張本人のお姉ちゃんは、少し呆れたように額に手をあてた。




「今時の高校生が、高2で化粧デビューなんて……あんたまさか本当は中学生?」

「違います!」




 そう言い放って、洗面所へ向かった。




 ……お姉ちゃんにデートのことがバレたのは、昨日の夜。


 持っている服を全部かき集めてなにを着ようか悩んでいた時に、ちょうどよくお姉ちゃんがやってきた。


 それから、なんで散らかしているのかというところから聞かれ、気づけばデートのところまで聞かれていた。


 そして、




“もう!違う!デートっていえばスカートでしょう!”


“あたしの服貸してあげるわよ。どうせやるなら可愛くしてあげるわ”


“なに怖じ気づいてんのよ。女は度胸なのよ?太ももぐらい、だしてなんぼよ”




 ……気づけばこんな格好に……。


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