危険ナ香リ
第4章

私の想イ、君知らズ





 ざわざわとざわめく教室の中、あたしは1人、ぼんやりと中庭を見つめていた。


 ひたすら無心で、周りから見たら“あいつ魂が抜けてるぞ”と言われそうなぐらいに無心で、中庭を見つめていた。




「きょーこー」

「……」

「きょーこー?」

「……」

「清瀬の恭子さーん」




 “清瀬”




「……っ、だあ!!」

「うわお!?ど、どどど、どしたの、いきなり」




 ヤバいヤバいヤバい恥ずかしい!!


 一晩経ったらめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた!


 それは時間が経つにつれて増しているように思えて……とりあえず、悶えるしかなかった。




「恭子?」




 柚乃ちゃんがいることを忘れるほどの悶えようだった。


 机に額をくっつけて頭を抱えて、唸り続けた。


 端から見たら“あいつ頭おかしくなったんじゃないの”と言われてもおかしくなかった。




 ……思い出す度に、恥ずかしくてたまらなくなる。


 なのに些細なことですぐ思い出すものだから、たまったものじゃない。


 ……どんな顔して会えばいいのか分からない。


 きっと、今佐久間先生の前に出されたら、あたしは恥ずかしさで溶けて消えるか、もしくは飛び降りて死ぬかのどちらかの行動をとるだろう。


 間違いなく。確実に。


.
< 238 / 400 >

この作品をシェア

pagetop