危険ナ香リ

和解の後に残るモノ







 放課後。


 柚乃ちゃんと一緒に帰ろうとした時、祐とすれ違う。


 思わず見つめてしまうけれど、祐はあたしの方なんか見てくれなかった。


 手を伸ばしたくなる衝動を抑える代わりに、あたしはただただ祐を見つめていた。




「恭子の家、行くの初めてだね」

「え?ああ、うん……」




 話しかけられて、ようやく柚乃ちゃんの横顔を見た。


 柚乃ちゃんの横顔は、楽しんでるとも悲しんでるとも言えない……見方を変えると、無表情にも見える顔をしていた。


 ……こうして並んで歩くのは初めてなわけじゃないのに。


 なぜだろう。


 あたし、緊張してる。




「……こうして一緒に帰るのも初めてだね」




 だから、こんなにも緊張しているのかな。


 ううん。


 それとも、これから話し合うことが怖いのかもしれない。


 “嫌い”だと一言いわれたらどうしよう、なんてことを、また考えてる。


 ……どうしてあたしは嫌われることしか考えられないんだろう。


 自分自身が、とても嫌になる。




「そういえばそうだね。……あたし達、2人で一緒に遊んだことすらないよね」

「……そうだね」

「もう、一年も一緒にいるのにね」




 ……柚乃ちゃんの呟くような声が、あたしの鼓膜ではなく、胸を突き刺した。


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