危険ナ香リ




「あのね、恭子」




 何を言われるんだろう。


 少しドキドキしながらお姉ちゃんを見つめる。




「ふられたって恭子は言うけど、あたしはどうしてもそれが信じられないの」

「なんで?」

「だって、」








―――― あたしが知っていると思っている佐久間先生の気持ちが“真実”とは限らない。





 あたしが“真実”だと思っているものは、他人から見たら“そうではない”と否定されてもおかしくはない。


 なぜなら、物事の見方は、人の数だけ存在するのだから。




 ……じゃあ、一体何か“真実”なのか。




 それは、佐久間先生にしか分からないことなのだと、お姉ちゃんがそう言った。




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