危険ナ香リ




 ……“カノジョ”……?


 “カノジョがいる人”?




 それって、まさか。


 ううん、でも、今まで佐久間先生の側にいたのに、そんな気配は全然……。




「あれ?まさかあんた、知らなかったの?」




 あたしの様子を見て、そう問いかけてくる佐藤さん。


 今、自分がどんな様子なのか分からなくて……今、どんな行動をとればいいのかも分からなくて。


 あたしはただそこに立っていた。


 胸の中では、“何”を“知らなかった”のか、聞きたいけど、聞きたくない。そんな思いでいっぱいだった。




 ……“聞きたくない”と、そう思っているということは、つまり、あたしはもう気づいてるってことなんだけど。




「まあ、知ってたらデマなんか流さないか」




 佐藤さんの赤い唇から吐き出されるであろう言葉から、逃げたいと思った。


 でも、肩を掴まれているあたしには、逃げることなんかできない。


 するりと、佐藤さんの腕を掴んでいた手が、重力に逆らうことなく、落ちていった。




「せっかくだし、教えてあげる」




 聞きたくない。






「佐久間先生にはカノジョがいるんだよ」






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