屋上
第一話
ある5月の昼下がり。昼休みがあともう5分ほどで終わってしまう時間帯。
校内にはどことなく気だるく、しかしあと一時間で授業が終わるという期待感に包まれ、何とも形容しがたい空気が流れていた。
僕は頬杖をつきながら、3階の窓から見える校庭で、5限の体育の準備をしている生徒を見ながら次の時間をふけようかと考えていた。
窓から入ってくる空気は、5月特有のさっぱりとした気持ちの良い…というよりも腹がいっぱいの僕には昼寝を誘うためにあるとしか思えないような気持ちの良い風が吹き込んでいた。
次の時間は、経を唱えている様にしか聞こえないじいさんの古典の授業だった。
最近は周りの生徒も高2という所謂中だるみの学年になった油断からか、去年よりもぱらぱらとだが授業をふける生徒が増えてきていた。
そんなことをぐだぐだと考えているうちに、もう5限の始まりを告げるチャイムが鳴る時間を時計が指している。
もう考える時間は残されていないらしい。
机でつっぷして寝るよりは屋上で寝転がり、読みかけの本でも読んでいる方がましな様な気がして、衝動的に机の中から読みかけの文庫本を取り出してふらふらと廊下に出た。Tの字の校舎の真ん中にある一番近い階段を上へ上へとのぼっていく。
この学校は田舎に在る為か、校舎から誰かが飛び降りるのではないかなんていう心配は誰もしていないらしく、またお昼休みに屋上でお弁当を食べる生徒が多いので、常時屋上の鍵は開きっぱなしになっているのは周知の事実だった。
ぎりぎりの時間に教室を出たにもかかわらず、五月蠅い教師に出くわさなかった嬉しさに思わず屋上への最後の階段を飛ぶように蹴ってのぼった。
さて、もうさっきチャイムが鳴ってしまったので後戻りすることは出来ない。
まあこの学校は学区内で上から2番目という微妙な位置に在る学校で、進学校でも無いが、生徒を監視するほどでも無いのんびりとした校風なので、特に授業をふけたからって怒られたりはしないのだが。
少し拍子抜けしながら少し乱れた息を落ち着かせ、開ける時ぎしぎしと鳴る古い扉を開けて屋上に出たら、ドアの外から春の気持ちの良い風が入ってきた。
 深く深呼吸をしようと大きく息を吸ったところで、僕は目の前に先客が居ることに気がついた。
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