【完】冷徹仮面王子と姫。
 もうお弁当を食べ終わっているのを、確認して。


 驚いた表情をした目の前の彼の表情の変化を気にしないように、それでもぶれ続ける視線を固定して。



 ……そっと口にした、言葉は。




「―――別れよ…」




 数十秒もの長い沈黙を破り、搾り出したたった一言。


 見据えていたはずの彼の顔は、視界の片隅にもなくなっている。



 あたしから告白したのに、きっと訳が分からない。



 それでも彼は、また一言で返す。



「分かった」



 あっけなかった。一瞬で壊れた。



 引きとめもしないのか。


 あたしの意思を思ってのことか。


 今更それがわかっても意味がないのだけど。



< 158 / 223 >

この作品をシェア

pagetop