【完】冷徹仮面王子と姫。
 あーちゃんの席に行くまでに、この量を考えることができたあたしは、割かしすごいと思う。我ながら。


 目の前に立って彼女の顔をのぞけば、なにやら浮き浮きの表情。



「昨日家族で買い物行ったんだけど、すごくいい店見つけてさ。売ってる服すごく可愛いの!!今度行かない?」



 その口から出たのは、嬉しい誘い。当然あたしは、すぐに食いつく。



「行く行くーっ!!」




 犬に置き換えれば、尻尾を振っているような状態だろうか。がくがくとうなづき、同意を示す。



「いつにしようか?学校から直接行ったほうがいいし、午前授業の日がいいかなぁ」


「んー、じゃぁ今週の土曜にしちゃおうか」



 とんとん拍子に話は進み、結果今週土曜となった。


 これまでの落ち込みはどこへやら、あたしは既に、土曜の事で頭が一杯に。


 どんな服を買おう。夏に向けて、サンダルも欲しい。


 始まってしまえば止まらない、買い物の妄想。乙女の特権…乙女とは程遠かった。


< 50 / 223 >

この作品をシェア

pagetop