どくんどくん ~SPRING SNOW~
毎日毎日、夢にユキが出てくる。夢でユキに会える。

会いたい。

会いたい。

会いたい。



その夜、滅多に鳴ることのない家の電話が鳴った。

お母さんが何やら話しているが、誰なんだろう。

階段を駆け上がる音が聞こえた。



「ちょっと、ハル!!ユキちゃんのお母さんからよ!」


僕は嫌な予感がした。


『・・・もしもし。』

『初めまして。あの、ユキの母です。心配かけてごめんなさいね。ユキは元気よ。』

体中の緊張が解けて、力が抜けてくるのがわかる。

『良かった・・・。ほんとに良かったです。元気なんですね・・』

『実は、昨日ユキの日記を見てしまったの。すると、ハルって言う名前が毎日書かれてあった。ユキは、あんな家庭だから私にそんな話もできなかったのね。それで、急いでユミちゃんに電話して、ハル君のこと教えてもらって・・本当に心配してくれてたんだってね・・。」

優しそうな声のお母さんは、いつか僕が見た泣いていたおばさんだ。

「家で、何があったんですか・・」

「話は聞いてると思うんだけど、父親がまたお酒飲んで暴れててね、私を殴ったのを見てユキが間に入ってくれて・・ユキは割れたガラスが肩に刺さってしまって・・。今、おばあちゃんちの近くの病院に入院してるの。傷はもう良くなってきて、跡も残らないの。でも、もう怖くて戻りたくないんじゃないかって。」

「え・・??肩にガラス・・・ですか・・・・。大丈夫なんですか!?ユキさんはいつ退院ですか?」

「もうすぐ退院できるわ。携帯電話もその時、お父さんに投げられて壊れちゃって。電話番号も全部消えちゃったから連絡できなかったの。本当はあなたの声一番に聞きたかったと思うわ。明日の夜、電話させるからね。本当にごめんなさいね。」

涙声で、僕に謝るユキのお母さん。

「おばさんは大丈夫ですか?けがとかしてないですか?僕が口を挟むことじゃないですけど・・・。いろいろあると思いますが頑張ってください。」

電話を切った後、ホッとして、床にしゃがみこんだ。


と、同時にユキの心の傷と体の傷が、心配で仕方ない。
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