キボウタクシー
私の家は仕事場からそう遠くなく、自転車で15分のところにある。

いつもは自転車通いなのだが、今日は歩き。

歩きでは倍の30分ほどで家に着く。

普段は歩いてもそんなに苦になる距離ではないが、寒さが加わると辛い。

片道ならともかく、この寒い中を往復で1時間も歩かねばならないのは寒がりの私にはかなりこたえる。


それではなぜわざわざ歩いて帰るのか。

その理由は単純明快、長年乗ってきたその自転車がついにその生涯を終えたためだ。

最近妙にギィと悲鳴を上げているな、とは私も思ってはいたのだが…つい先日息を引き取った。

気に入って毎日乗っていたので残念だが、壊れたものはしょうがない。

人間と同じで、物事には寿命というものが必ずあるのだということが、更に鮮明に私の心に突き刺さった出来事だった。

もう25を越えたくせに、私はまだ免許を持っていない。

かといって、この憂鬱な気分を背負いながら、公共の乗り物に乗るというのも嫌だった。

それ故、しぶしぶ歩くことを選択したわけだ。

免許、とっとけば良かった。
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