ずっと大好き…この恋は秘密 …

残酷な優しさ



「浅井さ〜ん」


12番車の前で清水みのりが浅井に手を振った。


瞬間的に誰だか分からなかった浅井だったが

厚い化粧ときつい香水で


以前の清水との教習を思い出した。



「指名しちゃった〜

これで給料あがる?」


相変わらずのタメ口に呆れたように笑いながら

浅井が教習手帳を受け取る。


「ホストじゃねぇよ」


まだまだ空欄だらけの清水の手帳に浅井はため息を漏らしながら

助手席に乗り込んだ。



「今日校外1回目か…

そこの端に停車して」



車を降りてトランク内の説明をしているうちに

浅井は以前のみのりとの教習を思い出した。






『…非常食?』


不安げな顔をしながら見上げた顔が
今でも浅井の頭に残っている。





…そういや、あの時初めて佐倉を可愛いって感じたのかな。




…緊張した横顔も


制服が可愛くないって膨れた顔も


『黄色い車』の話をした時のうれしそうな顔も…



すごく微笑ましくて…


50分の教習時間が短く感じた。




他の高校生と変わらないのに…



なんでか

佐倉に強く惹かれた。




勘違いだと思ってたけど…


佐倉を大切にしたいっていう気持ちが

会うたびに強くなって…


今は疑う余地もないくらいあいつが大事で…






「浅井さん、もう車乗っていい?」


清水の問いかけに浅井が頷く。




Yシャツの胸ポケットを少し重たくさせるジッポに…

浅井が顔を緩めた。




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