ずっと大好き…この恋は秘密 …


「……」


職員ならノックするはずのない扉。


浅井が渡辺と顔を見合わせた後
タバコの火を消してドアを開けた。



「あ、やっぱり」


元気のいい声が浅井の顔を呆れさせる。


「…なんだよ、清水」


中から渡辺の笑う声が響いたのを聞いて
浅井が苦笑いを浮かべて喫煙室から出た。


「ちょっとこっち来て!」


清水が浅井の手をぐんぐんひっぱり教習所の裏まで連れて来た。


教習所の裏は今は使っていない教習車が何台か置かれている。


教官ですらあまり来ない教習所裏の光景に目をやりながら
浅井がため息を落とした。


「…何?」



浅井が明らかに冷たく言う。



そんな浅井を見てにっこり微笑んだ後…

清水が小箱を浅井に差し出した。


「遅れちゃったけど誕生日プレゼント!」


浅井は清水の言葉に面食らったように呆然としていたが

冷静を取り戻して小さくため息をついた。



「…悪いけど受け取れない」


「や、大丈夫だよ。

あのジッポだから」


清水の言葉に浅井が顔を歪める。


「…ジッポは今持ってるやつしか使わないって言ったよな?」


「うん、だから浅井さんが使ってるのと同じやつ!」





…は?




浅井が清水が差し出したままの小箱に目を向ける。







見たことのある包装紙…


佐倉からもらったのと同じ…





「見つけるの結構大変だったんだよ?

しかも結構高くて…


でね、

ジッポの内側にメッセージ彫ってくれるって言うからあたしの名前…」



「清水。

ごめん、受け取れない」


清水の言葉を浅井が少し大きな声で遮った。






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